オランダ海芋
オランダ海芋
「アラム百合」と紹介されていたのがカラーリリーとの出会いだった。クノップフ先生の絵のタイトルだった。どんな花なのかなぁと思っていたら、街で見かけるようになった。すらっとした花だ。今や我が家で咲いている。
去年の夏、30センチ足らずの苗を植えたら、半年でぐんぐん大きくなった。冬は葉が黄色くなって枯れるとあったけど、暖冬のせいか緑のまま越冬して、1メートルくらいになると、この5月、花が咲いた。我が家の湿地が性に合っていたらしい。もともとはアフリカ産の植物なので、湿気に強いのかも? とにかく助かり、めでたしめでたし。
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牛乳瓶の形の、長い花瓶があるので、咲いたカラーを80センチくらいに切って、活けている。部屋で見ると迫力がある。白い花びらに見える部分は、実は咢だ。芯に見える黄色い部分が花の集合体。近くで見ると黄色い芯に白カビが生えたみたいなのが花。昔の名称はオランダ海芋(カイウ)なんだからイモ科だ。そばで匂いを嗅ぐと確かに芋くさい。そして私は、イモ科植物のハート形の葉が好きだ。
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子供の頃のこと、ピアノの上に赤いチューリップが一輪、活けてあった。ピアノの練習中、ふと目を上げてチューリップを見ると、チューリップは頭を垂れて、ちょうど私をのぞき込むように咲いている。それで咲いた花の中心というものを、つくづく眺める羽目になった。そのうち花を見ているのか、こちらが見られているのか判らなくなり、何だか花の中に吸い込まれてしまうような気がしてきた。怖くなって花瓶を下ろして、後ろのテーブルの上に置いた。チューリップに覗きこまれたまま、ピアノの練習を続けるのは、もはや不可能だったのだ。そのあと祖母に話した。咲き過ぎた花ってなんか怖いねと。それはそうねと彼女は言った。会話はそこで終わったので、なぜ怖いのか、そのときは謎のままだった。
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長じて、ジョージア・オキーフという画家が、咲いた花の芯をのぞき込むようなアングルで、でかでかと画面いっぱいに花を描いているのを見た。ははぁ、これはこれはと思う。咲いた花がなぜ怖いと子供のころ感じたのか? そのとき既に解っていたからだ。花は生殖器官なので、雄しべと雌しべの生殖の神秘が、子供心には得体の知れないエネルギーとして迫ってきて怖かったのだ。そういうことかぁと、私の中の子供は合点した。謎は解けてみると何でもないものだ。
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カラーの花は今日も元気に咲いている。今朝、二つ目の花が開くところだった。花は巻き込んだままの葉が、伸びてくるようなんだけど、咢にあたる先端部分が白いので、これは花だなと判る。カラーは玄関先の沙羅の木の後ろに植わっていて、アジサイは裏庭で花をつけ始めている。
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5月は風にそよぐ草木が爽やかだけど、夜は風が強かったり、急にパラパラと雨が落ちてきたりするので、天候が不安定だ。先週の満月の夜、白い影が下生えの中で動くのを見た。ハッとしてスピリットが来たと思った。もちろんすぐにあれは子猫だよと、理性は言ったけれど、私には何かが変わる予感がしている。
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咲く花を見守る天使たち
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